「EAPってどうやって作ればいいの?」
「ドクターとかアスレティックトレーナーなどの専門家しか、EAPって作れないの?」

ジンノウチ
今回の記事では、EAPを作成する4つのステップについて解説します。
EAPは、想定される緊急時にどのように対応するかを事前に毛かくし、初めて施設に来た人でも緊急時に遭遇した場合に迅速に対応できるように一目でわかりやすくまとまったシートのことです。

ジンノウチ
下記の記事でEAP(エマージェンシーアクションプラン: 緊急時対応計画)について解説していますので、参考にしてみてください。
EAPの重要性
運動施設で活動するスタッフは、施設内で緊急事態が起こったときには職務上、救護をする義務があります。
医師ではない一般の人が緊急事態に遭遇した場合には、バイスタンダーとして対応することになりますが、職務上に救護義務がある人はバイスタンダーではなく、ファーストレスポンダーと呼ばれています。

ジンノウチ
バイスタンダーとファーストレスポンダーの違いについては、下記の記事で説明しているので参考にしてみてください。
バイスタンダーの場合には、偶然、緊急事態に遭遇したため、緊急事態を想定して準備することはできません。しかし、ファーストレスポンダーは、緊急事態を想定することができ、救護する義務があるため、緊急事態が起こることを予防すると同時に、起こった際には適切かつ迅速に救急対応できる準備をしなければなりません。
運動施設でこの適切かつ迅速に救急対応できる準備の核となるのがEAPです。
EAPは一枚のシートを作成するというだけでなく、救護体制をしっかりと構築できているという1つの成果物になります。
EAPを作成した後には必ずEAPに基づくシミュレーション訓練を実施し、問題がないか、改善点がないかを検証します。
突然心停止が起こったと想定して、施設運営スタッフがEAP通りに救急対応ができているのか、AEDの電気ショックをするまでに何分かかったかなどを検証します。
もし、このシミュレーション訓練でAEDの電気ショックするまでの時間が5分以上かかってしまっているのであれば、AEDの設置場所を再考するのか、AEDが必要だと判断するまでに時間がかかってしまっているのであれば初期評価のスキルを再教育する必要があります。
一般的なCPR/AEDの講習会は一人一人の知識とスキルの向上ですが、このシミュレーション訓練では一人一人の知識やスキルの検証という意味合いもありますが、チームワークを高める役割も果たしています。
EAP作成の4つのステップ
ここからはEAPの作成方法について4つのステップで解説していきます。
EAPの作成ステップ① 必要な情報の収集
EAP作成の1つ目のステップは、EAPを作成するのに必要な情報の収集です。
誰がEAPを作成するのか、誰に作成したEAPを共有するかによってEAPに記載する情報は若干異なります。
今回は、EAPには絶対に必要な情報だけを紹介します。
119番通報時に必要な情報
緊急時と判断され、救急車を要請する際に119番通報中に伝える情報をまず集めてください。
具体的には、下記の情報です。
- 施設名/会場名
- 住所
- 目印
- 救急車/救急隊員のルート
「ヒト」 緊急時に対応する運動施設のスタッフの連絡先・待機場所
緊急時と判断したときには、一人でやるのではなく、誰かに助けを求めることが大切です。
助けを求めるのは、救急隊員だけではありません。
運動施設で緊急時と判断された際には、「手当」「調達」「連絡」「誘導」の4つの役割があります。
運動施設にドクターや看護師などの専門家がいる場合には、救急対応をなるべく早く引き継ぐことによってより適切な救急対応が期待できます。
また、救護室などの待機場所もEAPには記載しておく必要があります。
緊急時に助けになるのは救護スタッフだけではありません。
運動施設の受付スタッフや警備員などもスムーズにAEDなどを調達したり、救急車や救急隊員を誘導するには協力が必要です。
「モノ」 AEDなどの救急対応に必要な備品や設備の位置
最寄りのAEDがどこにあるのか、車椅子はどこに保管されているのか、水道や製氷機はどこにあるのか、など緊急時に必要な「モノ」の場所を確認してください。
EAPの作成時ではありませんが、日常的に運動施設内にあるAEDのアクセスや電源などを確認しましょう。
最寄りの病院・搬送方法
緊急時であれば、ほとんどの場合には救急車で病院へ搬送しますが、自家用車などで病院へ搬送する場合もあるので、最寄りの病院も必ず確認してください。
救急病院、整形外科、脳神経外科、眼科、耳鼻科、形成外科など運動・スポーツの種類によって起こりやすいケガに適切な病院・専門医の情報を収集してください。
また、平日や休日などによっても診察時間が異なる場合があるので注意してください。
EAPの作成ステップ② 緊急時アクションフローの作成
緊急時における救急対応に必要な「ヒト」と「モノ」の情報に加えて、119番通報と最寄りの病院などの救護体制に関する情報を集めた後は、実際に緊急時に誰がどのような役割を担うかの流れである緊急時アクションフローを作成します。
緊急時アクションフローでは、下記の3つのポイントが一目でわかるようにします。
- 緊急事態と判断したときに、どのようにEAPを発動するかというEAPサイン
- EAPが発動されてから、誰がどのような役割を果たすのか
- どこに傷病者を搬送するのか
緊急時における救急対応の鍵は、「救命の連鎖」です。
適切に傷病者に対して手当をしながら、救急隊員などの専門家にいかに迅速に引き継ぎ、医療機関へ搬送することです。
EAPの作成ステップ③ 地図の作成
緊急時アクションフローを作成してから、ステップ①で収集した情報を元に、見取り図を作成していきます。
見取り図の中には、AEDなどの「モノ」や救護室だけでなく、階段や段差など反層の障壁になるようなものもわかるようにします。
また、救急車の停止位置や救急隊員のルートも示すとわかりやすくなります。
EAPの作成ステップ④ 必要項目の記入
EAP作成の最後のステップとして、緊急時に必要な情報を必要項目に記入していきます。
緊急時に連絡する必要のあるスタッフやスタッフの連絡先、救急車を要請する際に伝える場所、最寄りの病院の情報などです。
地図の上にもAEDの場所などを示していますが、緊急時の際に地図上ではすぐに見つかれない可能性もあるので、文字でも記載しておきます。
最後に
EAPを作成してからシミュレーション訓練を行い、問題点・改善点があれば、EAPを修正してください。
正直、残念ではありますが、まだ日本ではこのEAPは認知され始めていますが、普及されているとは言えないのが現状です。
ただ、安全配慮義務、法的リスクなどを考慮すると絶対に必要になるのがEAPです。
事前に緊急事態を想定してどのように準備をしていたのかがとても重要です。
訴訟が起こらなかったとしても、救急対応をした後には「事前に何かできたのはないか」と自問自答し、ご自身を責める場合があります。
「事前にできること」、それがEAPを作成し、適切に迅速に対応するための救護体制を構築するためのステップです。
もちろん、どのように緊急事態と判断するのか、胸骨圧迫やAEDの使い方などを運動施設のスタッフが学ことも必要です。
運動施設で緊急時になった場合に、EAPがなければ、その場で必要な情報をすることに時間がかかり、迅速な対応はできなくなります。
緊急性が低いケガなどであれば、時間をかけてもあまり問題はないかもしれませんが、緊急時の場合には一刻を争います。
